ハケの階段を下りだすと、眼下に深い色をした水面が、杉林を透かして見えてきます。その趣は幽山霊谷といった雰囲気があります。
滄浪泉園は旧三井財閥役員の別荘だった場所で、大正8年、犬養毅首相がその名をつけました。「手や足を洗い、口をそそぎ、俗塵に汚れた心を洗い清める、清々と豊かな水の湧き出る泉のある庭」という意味だそうです。
昭和52年頃にはマンション開発の計画も持ち上がったこの庭園は、住民運動によって緑地保全地区に指定され、現在まで保全されるようになりました。往時と比べて面積も縮小し、近くの幹線道を走るトラックの騒音が激しいとはいえ,湧水池の静かなたたずまいや、秋の紅葉の見事さ、水禽窟の響きなどに誘われて、たびたび訪れたくなるのは私だけでしょうか。