府中のみならず多摩を代表する野草で、ニッコウキスゲの亜種。氷河期に低地に分布を広げたニッコウキスゲが、温暖化とともに低地に取り残され、独自の適応をしたものと考えられている。自生地は府中市北東部にある浅間山のみ。そのほとんどが北斜面に生えている。
浅間山は戦前は農家の薪炭林として、戦中は陸軍の弾薬庫として使用され、その後東京都が公園として公開するまで人手が入らなかった。そのような理由から、この稀少な野草が生き延びることができた。明治時代から多摩の中心地として開発が早かった府中に、唯一の自生地が存在すること自体が奇跡とも言える。現在は東京都とともに、地元市民などで構成する浅間山自然保護会が積極的な保護保全活動を行っており、その数は安定的に推移している。