府中の南部では今でも米の生産が行われており、暗渠化が進んだとはいえ、農業用水路が数本生き残っています。新田川(しんでんがわ)緑道は、そのような水路を利用した遊歩道です。ちなみに、この緑道がある辺りは、鎌倉時代末期に鎌倉幕府軍と新田義貞(にった・よしさだ)の軍勢が合戦を行い、幕府の命運を決めた『分倍河原古戦場』にあたります。この新田義貞という人物の印象が強いせいか、緑道の名前を「にったがわ」だと勘違いしている市民は多いようです(私も最近までそうでした)。人名ではなく、江戸時代の新田開墾に由来するようです。
新田川緑道の途中には、しょうぶ池があります。春先は池の廻りの桜が美しく,梅雨ともなると、アヤメやハナショウブが美しく咲きます。また、市がホタルの養殖も試みています。
※残念ながら近年、ここに住み着くアヒルなどによる踏圧でハナショウブは壊滅してしまいました。
護岸は大部分コンクリートなのですが、府中市内で古くからの水路の途中にある池というのはここだけです。他の池というと、市民健康センターや郷土の森博物館、府中公園、府中の森公園にある池はすべて人工度の高い池です。水面が広く開いているのも、このしょうぶ池だけです。このように考えてみると、残念ながら府中には、自然度の高い場所というのは非常に少ないことがわかります。府中は古くからこの地域の中心であっただけに、開発も早く、自然保護が意識されるようになったときには手遅れだったように思われます。
ともあれ、木立に囲まれた、静かな水のある風景を市内で探すなら、ここしかありえないでしょう。