「府中30景」にも選ばれているこの山門を持つ高安寺は、旧甲州街道沿いに建つ市内有数の古刹です。その由来は、足利尊氏が戦に倒れた武士たちの冥福を祈って全国に建てさせた「安国利生」の寺で、室町時代には幕府の比護のもと大いに栄えました。
このあたりの地名は「片町」といいます。これは、甲州街道に沿って両側に立ち並んだ町屋が、この付近だけ片側にしかないことに由来しています。その町屋がない片側を占めていたのが高安寺です。現在では寺の敷地は街道から奥まった場所になってしまいましたが、高安寺の隆盛をしのばせます。
境内には「府中の名木百選」指定樹が5件もあり、また、南側にある府中崖線の樹林帯が深い緑を残しています。JR南武線で府中本町〜分倍河原間を通る際には、ちょっと北側の崖上を見てみてください。周囲より濃い緑地が伺えるはずです。また、境内には武蔵坊弁慶ゆかりとされる井戸跡があり、周囲にも弁慶の名を冠した坂や橋跡があります。