日吉神社のケヤキ

 データのある樹としては樹種別で府中で4番目、東京都で10番目に太いとされるケヤキで、幹周6.3mあります。しかし、知名度はものすごく低く、腐朽が進んでおり、いつ倒壊しても不思議はない樹です。1994年に発行された『東京 巨樹探訪』(平松純宏/けやき出版)でも紹介されていますが、94年時点ではまだ包帯状態ではありませんでしたが、包帯を巻かれてからだいぶ月日が経っている様子が、その汚れ具合からも推察できます。

 有数の巨樹とはいえ、これだけ腐朽した樹を掲載することに、かなりの間躊躇しました。しかし、今回掲載を決断したのは、府中をとりまく緑の状態を端的に示している樹だと思ったからです。

 私たち府中の自然観は、馬場大門ケヤキ並木におんぶにだっこです。20万都市の中心市街地にあれだけの緑がある街は、日本では他にないでしょう。しかし、それだけなのです。府中より都心よりの市の方が府中より緑被率が高い、というデータがあります。ケヤキ並木そのものも、排気ガスなどの影響で年々衰退しています。府中は、多摩地域で最大のプラタナスさえ、道路拡張のために簡単に切られてしまう土地です。どうも私たち府中市民は、「あること」に満足してしまって、「守っていくこと」をおろそかにしてしまっているのではないか、と思えてなりません。

 日吉神社のケヤキにしてもそうです。府中は近隣では巨樹の多い特異な街だということは、巨樹ファンの間ではよく知られています。しかし、それら巨樹がどんな樹なのかは、あまり知られていません。なぜなら、書籍やウェブサイトで巨樹を紹介している人たちにとって、府中にある巨樹は魅力がないのです。それは、日吉神社のケヤキのように傷みきっていたり、排気ガスにさらされ大事にされていないからです。

 日吉神社のケヤキを、皆様に見てほしいと思います。そして、今からでも遅くない、大事にしようと思ってほしいと思います。「あること」だけで満足してしまっては、いつのまにか日吉神社のケヤキも何もかも、なくなっているかも知れません。

 

※都のケヤキのランキングには、府中3位の大國魂神社(鳥居前)のケヤキが含まれていません。したがって、実際には東京都11位となります。

 

日吉神社(ひえじんじゃ)のケヤキ

場所 府中市宮町3丁目21番地 日吉神社
交通 京王電鉄 府中競馬正門前駅 徒歩3分
樹のデータ 幹周6.3m 樹高約7m
所有者 日吉神社
保護制度 指定なし

幹周3m以上の樹木 Mapionで場所を確認する。


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