上野村とは旧村名で、勝浦市の内陸地域になります。太平洋から一山奥に入ると、緩やかな山々に囲まれた農村風景が広がります。県道沿いの角に、小さな案内表示の杭を見つけたら、そこを折れて数百メートル進むと、竹薮の影からその巨体が現れます。
この日の南総巨樹巡りは天気が良すぎたこともあって、樹とじっくり対面したり写真を撮るにはあまり良いコンディションではありませんでしたが、日が陰ってきた14時過ぎに訪れたこともあって、とても良い光線具合でシイと対面できました。
そういう条件もあったのでしょうが、私はこのシイがとても気に入りました。太い主幹が大きく二手に分かれ、更にいくつかの太枝が伸びた姿は、どこか盆栽の松のような姿に似ています。もちろん、姿を整えてこうなったのではなく、自然とこの姿になっていったわけですし、大きさももの凄く違うわけですが。
心配される点は、周囲が完全に竹林に囲まれていることです。竹の地下茎がこの巨樹の根を痛めつけている可能性がないとは言えません。今回の南総巡りでは多くの竹枯れを目撃しましたが、ここの竹林はまだ元気なようです。話しが少しずれますが、今回南総を巡ってみてあまりにも竹林が多いことに驚かされました。山の手入れが行われていないということです。そして竹自身が密になりすぎたため、一斉に枯れていたのです(恐らく最近、花をつけて種子を残し、一斉に枯れたのでしょう)。このような現状は、もちろん巨樹だけでなく、樹木や草花の多様性を阻害するだけでなく、表土の流出など地域全体にとって危険な要素を含んでいます。