海岸線から一山越えたところで、やや広めの盆地に田んぼが広がっています。その盆地の、山裾に近いところに長福寺の山門が見えます。お寺の建物は民家のような建物で高さはなく、目印はこの山門だけです。その山門をくぐってすぐ左手に、目的のイヌマキがいました。
高さは目立つほどはありません。しかし成長の遅いマキとしてはかなりの太さを持っています。訪れた夕方の日差しが低い枝の下から幹を照らしていたのが印象的です。幾筋もの皺が古木に風格を与えています。全体の樹形は、丸みを帯びた穏やかな姿をしています。
現地の解説板によれば、この樹には源頼朝に関する伝説があり、頼朝がこの地を訪れた際、このマキに筆を掛けたのだといいます。もっとも、これはこのイヌマキがかなりの古木なので、頼朝の時代から生きているのではないかという想像からくる伝承に過ぎないようです。個人的には、このイヌマキは2本以上の合体ではないかという気がしますので、そこまで年を経た樹ではないと思いますが、それでも注目すべき古木であることには間違いないでしょう。