高照寺の乳イチョウ

 勝浦市街の狭い路地を通り進んでいくと、突如目の前の壁の向こうにおびただしい細枝が空に向かって突き出している姿が現れます。とても広範囲に枝が広がっている姿に、全体を見ないと不思議な印象を覚えるでしょう。

 寺内に入ってみると更に驚かされると思います。巨大なイチョウは中央から真っ二つに裂け、四方に大きな枝を伸ばしています。それらがおびただしい細枝をまるで生け花に使う剣山のように伸ばしています。荒々しさと繊細さを同時にあわせ持つ、何とも不思議な姿です。

 この巨樹は100年ほど前の火事で上部が失われてしまったそうです。それで中央が欠けているのでしょう。ややもすると、両側に倒れてしまいそうな姿ですが、枝の多さが物語るように、健康状態は悪くなさそうですので、根もしっかりとしていることでしょう。

 この樹が注目されるのは、その気根の多さのようです。「のようです」と書いたのは、確かに気根は多かったし立派なものもありましたが、全体の樹形の印象が強すぎて、個人的には気根に対して印象を残すことがなかったためです。伝承では、イチョウが植えられる以前、ある高僧が乳の出に悩む里の婦人を治療したそうで、里人がその僧の死後に植えたのがこのイチョウなのだそうです。詳しくは勝浦市商工会に伝承を紹介しているページがあるのでご覧ください。全国にイチョウと母乳に関する伝承は多いのですが、イチョウ以前の伝承があるのは珍しいかもしれません。

 上の写真で分かるように、このイチョウの細枝は一方向にたなびいているだけでなく、高さまで揃っています。これは恐らく海風の影響でしょう。高照寺は海に近く、半島のように突き出した場所の付け根にあります。半島の先端の方は山があるのですが、このあたりはなだらかな平地で、陸地沿いに吹く南風が吹きぬける地形になっています。

 今回とても残念だったのは、天気が良すぎてまともな写真が撮影できなかったことです。とても立派で、特異な姿をしているだけに残念でした。やや遠方ではありますが、機会を見て再度訪れたいと強く思わせる一樹でした。

 

高照寺の乳イチョウ

場所 千葉県勝浦市勝浦49番地 高照寺
交通 JR外房線 勝浦駅 徒歩10分
樹のデータ 根回り約10m 樹高約10m 推定樹齢1000年
保護制度 千葉県指定天然記念物

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※両マップサービスとも、実際の位置とは違う場所に「高照寺の乳イチョウ」の表示が掲載されていますが、実際の所在地は中央に赤いポインタで示した場所ですのでご注意ください。


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