奥多摩駅から日原方面に向かってしばらく進みます。日原川の深い渓谷を右手に進むと、谷川にうっかりすると見落としそうな白い小さな看板が立っています。コンクリ舗装された道を下り、つり橋を渡って対岸に出ると、民家が2軒あり、その裏手にこの巨樹が待ち構えています。
カシの巨樹というのは、ありそうでなかなか存在しないものです。材が堅いため、様々な用途に利用されているのがその理由でしょう。ちなみに、古くからアカガシと呼ばれてきたこの巨樹は、近年の調査でツクバネガシという種類であることが確認されています。
斜面からほぼ垂直に立ち上がった太い幹から、谷側に向かって太い枝を何本も伸ばしています。その枝の広がりは非常に雄大な樹形を作っているのですが、山側にはまったくと言うほど枝が伸びていないため、ともすると重量バランスが崩れて谷側に倒壊しかねません。ここでは、それを防ぐためにワイヤーで山側から吊るという、よそではあまり見られない処置がとられています。というのも、この樹の山側には、コンクリート製の土台があるのです。古いつり橋のアンカーなのか、それとも木材搬出用の設備なのかは分かりません。
山側には鬼子母神が祀られています。この鬼子母神は下の民家の屋敷神で、1744年の建立という記録があるそうです。そしてよく見ると、この鬼子母神の前にツクバネガシはいるわけですが、よく見てみると、少し太めのスギの樹と対になって神前配置を形成しているのが分かります。