金袋山のミズナラ

 23区以外は東京ではない!と思ってるそこのアナタ。我々多摩の住民だって好きで東京都民してるわけじゃないんですよ。元はといえば、都区部の水源確保のために無理やり神奈川県から編入されたんですから。少しは有難く思ってほしいものです。

 ……と、いつもとは違う切り口で書き始めてみましたが、高層ビルとおしゃれなお店だけが東京ではありません。奥多摩・日原の深い谷と高い山は、それこそ東京のライフラインを守るもうひとつの東京の姿。恐らくは地方からお越しになった方でも、ご自身の田舎より深い山々に驚かされることでしょう。

 その深い山々は、一時期の人工造林化の波に抗いつつ、水源涵養林として、いまだ多くの自然林を残しています。そして、その深い森の中に、多くの巨樹を隠していました。

 日原集落から奥へ進み、斜面に取り付きます(あえて細かい場所には触れません)。急傾斜を登ること1時間強、それから尾根に沿って進むこと1時間弱、突如として山の中腹にほぼ平坦になった場所にたどり着きます。そしてその平地の中央に、逢いたかったミズナラの巨樹が悠然と立っていました。

 まるで恐竜の背びれを思われるような姿。ほぼ平坦に見えるこの場所でも、よく見るとミズナラは若干傾斜のある場所に立っていて、そのせいか谷側に向かって斜めに立っています。その幹を支えるために、上側になった幹を頑丈に発達させているのです。もし、このミズナラが斜めになっていなかったら、幹は真円に近い状態で成長し、ここまで太くはならなかったでしょう。

 このミズナラは、日原を拠点にして活動する「巨樹の会」によって確認され、世に知られるようになりました。しかし、この場所には古い時代の石積みが残されていて、人の活動があったことを示しています。恐らくミズナラは、決して知られざる存在ではなく、この森で生きてきた人たちにとってよく知られた、神聖な存在だったのでしょう。ここまで登る途中にも、大きなケヤキが立つ場所の付近にワサビ田や炭焼き釜の跡があり、決してここが人跡未踏の地ではないことを示しています。そして、そのような秘された、あるいは忘れられていた巨樹たちが、近年になってたくさん確認されています。この森の豊かさを示していると言えるのではないでしょうか。

 

 私が最初にこの樹を訪れたのは、日原森林館が主催する巨樹ツアーに参加した際でした。実際のところ、このミズナラにたどり着くまでの道はかなり整備が進んでいて、初級のハイカーでも登れるようになっていますが、まだ登山地図等に載っていない上、一部でコースが分かり難くなっています。自然保護、地域振興の観点からも、初回は日原森林館に問い合わせて、有料のガイドツアーに参加してください。

 

金袋山のミズナラ

場所 奥多摩町日原 金袋山山中
交通 JR青梅線 奥多摩駅からバス「日原鍾乳洞」行き終点下車 徒歩約2時間
(土日祝日はバスは途中の「東日原」止まり)
樹のデータ 幹周7.5m
保護制度 指定なし

Mapionで場所を確認する。


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