首賭けイチョウ

Nov.19.2000

 このイチョウをはじめて見たのは1998年の10月でした。当時はそれほど樹に興味はなかったのですが、それでもこの樹の印象は強烈でした。その姿の美しいこと、そして大きいこと。単純に幹周の太さを測るならもっと太いイチョウはいくらでもありますが、このイチョウには他にはない優雅さを備えた力強さがあって、圧倒されたものです。

 この樹がなぜ、首賭けイチョウと呼ばれるのか。日比谷公園は1903(明治36)年に開園した日本初の洋式庭園で、規模こそ敵わないものの、ニューヨークのセントラルパークを模したとも言われますが、その設計者のひとりに高名な林学博士の本多静六氏がいました。1899年頃、現在の日比谷交差点あたりにあったイチョウの巨樹が、日比谷通りの拡張のため伐採されそうになっているのを知った本多博士は、東京市参事会(現在の都議会に相当)の星亨議長に面会を求め、貴重な巨樹であるから保存するよう進言しました。この際、巨大すぎて移植不可能と言われていたこのイチョウを、本多博士が「自分の首に賭けても成功させる」と言ったことから、首賭けイチョウと呼ばれるようになったのです。この賭けの結果がどうであったかは、100年経った今、日比谷公園を訪れれば明らかです。

Nov.19.2000

 本多博士は他にも明治神宮の森を計画するなど、多くの功績をみることができます。このような先見の明がある大人物が存在したからこそ、東京都内には多くの豊かな緑地が残され、首賭けイチョウも今にあるわけですが、残念なことに、現代の人ではありません。本多博士が現在の世の中に生きていたら、と思わずにいられない現状があちらこちらに散見されることが、とても残念なことです。

 写真右手には10円カレーで有名なレストランの松本楼があり、私は近くに来るとここに寄り、ガーデンテラスの席でイチョウを見ながら紅茶を飲んでいます。首賭けイチョウは、そういう洒落た雰囲気の中で楽しめる、日本唯一の巨樹ではないかと思います。テラスで食事をしていると、ときには銀杏の臭いや、落ちてくる葉が気になるのですが、幸い、今までのところは食事の中に葉が落ちた経験はありません(^.^)

 

首賭けイチョウ

場所 千代田区日比谷公園1-6 日比谷公園 
交通 東京メトロ丸の内線 霞ヶ関駅 徒歩3分
樹のデータ 幹周6.44m 樹高20m(1988年環境庁調査)
保護制度 都市計画公園

Mapionで場所を確認する。


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