イチョウとしては東京都最大の樹。いや、つい数年前までは樹種を問わず東京都最大とされていたのですが、御蔵島村にこれを上回る巨樹が発見されたために、現在は東京都「本土」最大の巨樹となっています。
そんな巨樹が、麻布という混み入った街にあることも驚きですが、もともとイチョウは公害に強いこともあって、都内では割合大きな樹が残っています。
しかしイチョウの巨体も、墓地の一角では狭そうです。周囲は墓石が所狭しと立ち並び、なかなか肉眼でも全体像は見にくい状況。ここを訪れて、はじめて多くの写真家が巨大な気根ばかりを撮って全体を撮らない理由が分かりました。なかなかに写真家泣かせの環境です。
イチョウの裏側に回って、更に驚きがあります。ひどく焦げているのです。戦争中の空襲被害と言われていますが、痛々しいものです。
(※一部の書籍にはホームレス失火説が書かれていますが、麻布山善福寺様からそのような事実はないとのご指摘を頂きました。ありがとうございました。)
逆さイチョウの名の由来は、気根の発達が著しく、まるで樹を逆さまにしたような姿から来ています。実はもうひとつ名前があって、「杖イチョウ」と呼ばれることもあります。こちらは、鎌倉時代の1229年、寺を訪れた親鸞が持っていた杖を刺したものが成長して大イチョウになったという伝説に基づくものです。