善福寺の逆さイチョウ

Nov.19.2001

 イチョウとしては東京都最大の樹。いや、つい数年前までは樹種を問わず東京都最大とされていたのですが、御蔵島村にこれを上回る巨樹が発見されたために、現在は東京都「本土」最大の巨樹となっています。

 そんな巨樹が、麻布という混み入った街にあることも驚きですが、もともとイチョウは公害に強いこともあって、都内では割合大きな樹が残っています。

 しかしイチョウの巨体も、墓地の一角では狭そうです。周囲は墓石が所狭しと立ち並び、なかなか肉眼でも全体像は見にくい状況。ここを訪れて、はじめて多くの写真家が巨大な気根ばかりを撮って全体を撮らない理由が分かりました。なかなかに写真家泣かせの環境です。

 イチョウの裏側に回って、更に驚きがあります。ひどく焦げているのです。戦争中の空襲被害と言われていますが、痛々しいものです。
(※一部の書籍にはホームレス失火説が書かれていますが、麻布山善福寺様からそのような事実はないとのご指摘を頂きました。ありがとうございました。)

 逆さイチョウの名の由来は、気根の発達が著しく、まるで樹を逆さまにしたような姿から来ています。実はもうひとつ名前があって、「杖イチョウ」と呼ばれることもあります。こちらは、鎌倉時代の1229年、寺を訪れた親鸞が持っていた杖を刺したものが成長して大イチョウになったという伝説に基づくものです。

Dec.03.2001

 残念なのは、現在建設が進んでいる背後の高層マンションの存在です。この写真が絵になると思われるか、それとも、景観を壊していると思われるかは、人それぞれだと思います。しかし、このマンション建設によって、善福寺よりも高台にある港区の史跡「麻布がま池」を埋め立てていることは、地下水の流れにも大きく影響を及ぼすだろうと思われ、その点で逆さイチョウに対して脅威になるかもしれません。近年、仙台で建設された地下鉄によって、国の天然記念物に指定されている「苦竹のイチョウ」が急激に弱ってきた、といいます。逆さイチョウも同じことが起こらないとは言い切れません。

 

善福寺の逆さイチョウ

場所 港区元麻布1丁目6番地の21 善福寺
交通 東京メトロ南北線/都営大江戸線 麻布十番駅 徒歩10分
樹のデータ 幹周10.4m 樹高約20m 推定樹齢750年(1988年環境庁調査)
保護制度 国指定天然記念物

Mapionで場所を確認する。


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