徳川家康を祀る東照宮のひとつに、イチョウの巨樹がいます。東照宮創建時に徳川3代将軍家光が植えたという、「手植え」のイチョウです。
日比谷通りから東照宮に入ると、社殿向かって右手にこのイチョウの巨樹がいます。左手には、やや若いイチョウがいます。こちらもいつのイチョウなのか気になるところです。ひょっとすると、最初から対で植えられたイチョウの片方だけが生き残っているのかも知れません。
右手の巨樹は、これはさすがといった大きさ。これだけの太さの樹が、素直にまっすぐ立ち上がっている姿は、思わず引き込まれてしまいます。高さ5mほどのところから幹が分かれ、枝も広がりだします。気根はほとんど見られず、すっきりして気持ちのいい樹です。
イチョウの周囲には植え込みもなく、地面はすっきりとしています。隣は駐車場なので明るく、木漏れ日が地面に届き、風も通るこの場所には、気持ちよくて長居したくなります。
戦前には文部省の天然紀念物に指定されていますが、戦後は国の天然記念物には指定されず、1956年になって東京都の天然記念物に指定されています。これだけの巨樹がどういうわけか、1988年の環境庁調査には報告されていません。報告されていれば、樹種別で東京都の十指に入る有数の巨樹です。
2001年の秋、私は都区内で何度もイチョウの黄葉めぐりをしました。11月中には何度も芝東照宮を訪れましたが、イチョウは一向に黄葉する気配を見せず、この樹の黄葉は見られないのだろうか、と半ば諦めていました。
12月も中旬になって、別件で赤羽橋へ赴き、その折立ち寄ってみると、なんと黄葉の見頃。なんと遅い黄葉でしょう。都内の大きなイチョウとしては、最も遅い秋の終わりを楽しむことができるのが、このイチョウかもしれませんね。
近くには、赤羽橋の方へ少し歩くと、都内有数のクスノキの巨樹があります。反対方向の増上寺には都内には珍しいカヤの巨木や、グラント将軍松として有名なヒマラヤスギがいます。同時にチェックしてみてください。