芝公園の中心に位置する増上寺は広大な寺域をもつ東京でも屈指の寺院として有名です。境内には、来日したグラント(1897、辞任後)、ブッシュ父(1989)の両アメリカ大統領が手植えした記念樹もおり、グラントが植えた松(ヒマラヤスギ)は今では立派な大木に成長しています。
境内の南東端の近いところに、港区の天然記念物に指定されたカヤの巨木がいます。交通量の多い日比谷通りがすぐ目の前にあるような、大気汚染の厳しいあたりには珍しい樹です。
増上寺は1393年に千代田区平河町付近に創建され、江戸城築城の関係で1598年に現在地に移転しました。移転当時を含め、増上寺の資料には、このカヤについての記載は一切ないそうで、植樹されたのではなく自生木だろうと考えられています。推定樹齢も、増上寺移転以前の600年とされています。
イチョウがほとんどの東京中央部の巨樹・巨木にあって、カヤの存在、それも自生木はとても貴重といえます。しかしながら、やはり現代の環境はこのカヤには厳しいようで、幹には樹皮が剥がれた痕が痛々しく、枝の広がりや葉の茂りも薄く感じます。
近くには、一見の価値ある美しい芝東照宮のイチョウがいます。さらに、赤羽橋の方へ少し歩くと、都内有数のクスノキの巨樹がいます。