日置のハダカガヤ

 篠山市には、かなりの巨樹や歴史ある樹がいて、丹波地方の注目ポイントといえるかもしれません。この樹を訪れる前に立ち寄った医王寺には、一部の葉がラッパ状になった珍しいラッパイチョウがいましたし、今回は訪れませんでしたが、藤坂峠には大きなカツラもいます。

 さて、このカヤ。日置小学校の隣にある磯山八幡神社の境内に3本のカヤが並んでいます。3本とも、大きさはほとんど同じで幹は苔むし、根元は芝が敷かれて保護されています。幹周4m程度のカヤが3本も整然と並ぶ姿は、なんともいい雰囲気です。

 この3本のカヤの、真ん中にいる1本が、ハダカガヤと呼ばれています。何が裸かというと、種です。通常、カヤの種子は堅い殻に覆われているのですが、このカヤの種子の殻は非常に薄くて殻がないように見えるのだそうです。このような例は全国的にほかになく、旧・史蹟名勝天然紀念物保護法が制定されて間もない大正14年に国の天然記念物に指定されています。

 このような古木には何らかの伝承がつきものです。このカヤには、足利尊氏の伝承が残っています。鎌倉幕府滅亡後、建武天皇の復権に尽くした尊氏ですが、まもなく朝廷は力を持った尊氏を危険視し追討します。京都を逃れた尊氏は現在の京都府亀岡市で兵を挙げ、この地に立ち寄ります。ここで菓子として出されたカヤの実に戦勝祈願をして、皮をむいて蒔いたものが、このカヤに育ったといいます。

 このハダカガヤ、種子を育ててもハダカガヤにならず、普通の殻のついた実がなるといいます。同じような話を東京・日の出町のシダレアカシデでも聞きますが、突然変異種の子孫は育たないというのは、自然のシステムがうまく出来ている証拠なのかもしれません。

 

日置のハダカガヤ

場所 兵庫県篠山市日置 磯宮八幡神社
交通 JR福知山線篠山口駅からバス「日置」下車歩
樹のデータ 幹周4m 樹高約20m 推定樹齢600年
保護制度 国指定天然記念物

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