京都の北方、貴船渓谷にある貴船神社は、長年、私の憧れの地でした。ある写真で、夕暮れの石段に灯篭の火が灯った秋の風景を見て、いずれ訪れたいと思っていたのです。
訪れたのは春の朝ですので、写真のイメージとはかなり違いましたが、それでも、この地が持つ独特の清浄感を秘めた雰囲気はそのもので、とても心地よい訪問となりました。
この渓谷で複数の巨樹巨木と対面しましたが、このページではその一部を紹介します。
まず、本宮の石段を上り詰めた左手にいる、カツラの樹。本宮の御神木となっています。たくさんの幹が真っ直ぐ伸び、ある高さで八方に広がる姿を、龍の昇天になぞらえているといいます。瑞々しく開いた若葉が朝日を透かして、美しい緑の輝きを見せていました。
上流の奥の院には、これを上回る大きなカツラがいますが、御神木のカツラとはまったく好対照な姿をしている点が面白いです。貴船神社は古くは「気生嶺」「気生根」と書いたといいます。大地の気が発生する地という意味だとい、御神木のカツラのひこばえの多さは、まさに生命力の象徴として、御神木にふさわしいものだという気がします。