実はこの樹が今回の貴船訪問でもっとも喜びを与えてくれた樹です。京都市天然記念物のカツラと隣り合うように立っているトチノキで、太さや高さはほぼ一緒でしょう。しかしカツラと違って枝に広がりがあるのが、このトチの美しさを引き立てています。
また訪れたタイミングもとてもよかったのだろうと思います。葉はまだそれほど大きくなく、空がかなり透けて見え、朝日が強い光でトチノキを上から照らしています。大きく育った葉が木漏れ日に照らされるトチノキの姿も好きですが、木肌の陰影がくっきりと浮き出す春先のトチノキも、またいいものだと思いました。
トチノキとしても、恐らくまだ若い方でしょう。これからもっと太っていき、私たちがいなくなる頃にはカツラと共に貴船渓谷の主となるにちがいありません。