井戸神社のカツラ

 彦根市に隣り合う多賀町。国道を離れて川沿いの道を山奥へと向かいます。途中で道に迷ったりしながら、山の上の廃集落までたどりつき、そこから歩くこと1〜2分。大きなカツラに出会います。

 谷筋のそこだけが広場のようになっていて、何とも不思議な静寂感が漂っています。その静寂さが、とても不思議でした。何故なら、カツラの巨樹がいるところは、ほとんど例外なく水の流れがあるのに、ここには小さな池があるのみです。その池も、水が湧き出してはいるようですが、流れ出す水は、すぐにも土中に吸い込まれてしまうほど細く、どうしてこれだけの巨樹が育ったのか、不思議に思えてなりません。

 また、この池がとても不思議な青い色をしています。何らかの鉱物が溶け込んでいるのでしょう。その色が、この谷間の不思議な空間を強調しているように思えます。神社の名前の由来でもあるこの「井戸」、カツラの巨樹と神社の小さな社がある側の壁面は古い石垣が築かれていて、いつ、どうしてこの一方だけに石垣を築いたのか不思議に思います。

 周囲の山林はスギの人工林になっているので、かつては水が流れた谷筋も、保水力を失ってしまったのだろうかとも考えましたが、そうすると、ここに「井戸」と呼ばれる池があり、石垣が築かれたことの説明ができなくなります。神社が祀られ、石垣が築かれたのは、周囲がスギ人工林になるはるか前のはずです。そうすると、やはりここには沢水の流れはなかったのだろうか……。

 カツラの樹自身は、周囲の山林からの被圧を受けつづけたのか、横方向への枝の広がりはなく、たくさんの幹は陽の光を受けようと、真っ直ぐに上へと伸びています。ここでは、あまり陽の光は地面まで届きそうにありません。その薄暗さが、また、この谷間の空間の神秘性を印象付けるのだろうと思います。

井戸神社のカツラを訪れる方へ
このカツラ訪問時に、アプローチに関する詳細な情報が欠けていたために、道に迷うことがありましたので、こちらのページにアプローチに関する詳細をまとめておきました。参考にご覧ください。

 

井戸神社のカツラ

場所 滋賀県犬上郡多賀町大字向之倉字東反尻63番地 井戸神社
交通 近江鉄道多賀線 多賀大社前駅からタクシー等
 →こちらのページをご覧ください。
樹のデータ 幹周11.6m 樹高約39m 推定樹齢400年
保護制度 滋賀県指定自然記念物

Mapionで場所を確認する。


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