巨樹好きの中では、仕立てられた松のように、人工的に整えられた樹の人気はあんまりないように感じます。それは、巨樹の生命力に惹かれる人間にとって、その肝心の力強さが薄いことと無関係ではないでしょう。
萬休院の舞鶴松に対して、私は上記のような先入観を持っていたのは事実です。つまり、整えられた美しさはあるものの、それがどれだけ私の感情に訴えてくるか、今ひとつピンと来なかったのです。
ところが、一目見た瞬間、私はこのマツが好きになってしまいました。想像以上に大きいのです。確かに枝の下には無数の支えが見えていますが、大した問題には思えませんでした。このなだらかで雄大な樹形には、出会えた喜びすら感じてしまいました。
舞鶴松の手前には石庭があり、美しい日本庭園になっています。考えてみれば、盆栽も日本の伝統文化ですし、石庭と巨松という取り合わせは、日本人の伝統的価値観に極めて自然にマッチするのかも知れません。しかし、舞鶴松の名前は、鶴が羽根を広げた姿をイメージしているらしいのですが、どうもそういう風には見えませんでした(笑)。