アメリカ大使館宿舎の裏手に鬱蒼とした社叢の杜がありました。赤坂・六本木の繁華街に近いこの場所に、こんな濃い、静かな場所があるとは、誰もが驚くのではないでしょうか。
ここには3本のイチョウの巨樹がいます。社殿正面の参道沿い向かって右手に2本、少し離れたところに1本。離れたところにいる1本は港区の天然記念物に指定されています。このイチョウは地面近くから2本に分かれていて、ひこばえも多く奔放な樹形をしています。写真を撮ろうとすると、ひこばえや広がった細枝についた葉が邪魔して、幹がよく伺えません。
参道に沿った2本は主幹がまっすぐ立ち上がった、美しい樹形をしています。それぞれ、たくさんの枝と気根を伸ばしていますが、やや傷みも目立ちます。
黄葉の時期を見計らって再訪すると、少し盛りをすぎて、かなり葉が落ちてしまっていました。周囲の樹林で鬱蒼とした印象があったので、落葉はまだ先だろうと考えていたのが間違い。実際には、イチョウ自身にはかなり陽が当たるようです。参道沿いの2本のイチョウは完全に落葉しており、天然記念物のイチョウも、まもなくすべて落ちてしまうといった感じでした。
私は当初、天然記念物のイチョウは、主幹と支幹の2本で成る樹だと思っていたのですが、解説板の裏側へ回ると、前回はひこばえと葉で隠されて見えなかった部分に、大きな空洞があることが分かりました。大きな主幹があったと思われる跡で、内側は焦げています。参道沿いの1本も、落葉してはじめて、焦げ跡があることが分かりました。失火と考えると、高いところにだけ痕跡があるのが変なので、戦争中の空襲による痕でしょうか。