どの本の写真を見ても、遠くから撮った写真しか載っていない、不思議なイチョウ。それが旧蓬莱園のイチョウでした。台東区の街中にあり比較的アプローチは簡単なはず。しかし、都立忍岡高校の敷地内にある、だから入れない、と本には書いてあります。
ある晴れた土曜日、思い切って訪ねてみることにしました。浅草橋駅から高校へ向かうと、テニスコートのネット越しにその威容が伺えます。校舎と校舎の間に挟まれ、ちょっと窮屈な感じもするその空間いっぱいに、イチョウは枝を広げていました。10月下旬にもかかわらず、すでに黄葉がはじまっているのは驚かされます。
授業は休みのようで、用務員室を訪ねると、案外簡単に通してくれました。通路を通り抜け、内庭になっている校庭へ出ると、渡り廊下越しに大きなイチョウの樹冠が見えます。過去に見た写真のすべては、どうも校庭の手前から撮られているようでした。校庭はラバーコートなので、恐らく過去の訪問者は、このコートに立ち入ることが出来ない種類の靴を履いていたのでは、と思います。
渡り廊下の向こう側は小さな池のある庭園になっていました。そもそもこの土地は、平戸藩主が1632年に小堀遠州に築造させた庭園だったそうで、イチョウはその築造当時からいたとされています。
それにしても、遠くから見た樹冠の広がりからは、このすっきりとした根元は想像がつきませんでした。遠景では、何本かが集まっているとしても不思議ではないような広がりがあります。しかし、根元から見上げたイチョウは、高さ2mほどから大枝が放射状に広がっています。このような樹形のイチョウはお目にかかったことがありませんが、恐らくそれも、校舎と校舎に挟まれ、風の影響を受けなかったためではないかと思います。
旧蓬莱園のイチョウを訪れる際には以下の点に注意してください。
このイチョウは学校の敷地内にあり、根元に行くためには学校側の許可が必要です。
また、ラバーコートの校庭を横切るため、革靴やヒール等では入れません。ゴム底の運動靴が無難でしょう。ただし、スリッパの貸出があるそうです。