水神社のイチョウ

Dec.30.2004

 このイチョウに出逢ったのは2004年12月28日、年の瀬の慌しい中、仕事中に偶然出逢ったのでした。傾斜地に対で立ち、まだ僅かに残る黄葉が風にそよぐ姿に心惹かれるものがありましたが、生憎と仕事中だったためにじっくりと対面することができませんでした。仕事が終わる翌々日に逢いに行こうと決めましたが、翌29日、東京はこの冬の初降雪を記録。風を伴って強く降る雪に、葉が全部落ちきってしまうのではと心配しました。

 その次の12月30日に、ようやく時間ができて逢いに行きました。前日の雪で空は塵が洗い落とされて澄んだブルー。イチョウは、まだ僅かに黄葉をつけたまま、待っていてくれました。石段を挟んで左右に1本づつ。僅かに残るギンナンの臭いからすると、右手が雌、左手の気根が垂れた方が雄であると思われます。特に雄樹の気根は1つが大きく垂れ、また根元が大きく崩れていることもあり、根がガッチリと地面を掴んでいて、力強さを感じさせます。最近折れたと思われる大枝の欠損が見られますが、両方とも極めて健康そうに思われました。

 

 ここは神田川のほとりにあたり、背後には丘がある場所です。その丘陵地には椿山荘や新江戸川公園など、池を巡らせた庭園があり、江戸時代から行楽地として賑わった地域だそうです。そして神田川を挟んだ対岸は早稲田。現在は早稲田大学があり、ビルが立ち並ぶ一帯ですが、名が示すとおり、かつては水田地帯。水が豊かな場所であることは容易に想像ができます。

 水神社の由来は、そのような豊富な水に感謝を示すものなのかと思いきや、実は江戸時代、神田川に設けられた堰を守る守護神を置いたのがはじまりだといいます。神社の200mほど下流には大滝橋という橋があり、かつてはこの付近に、神田川の水を神田や日本橋に流すための堰があったのだそうですが、言い伝えでは八幡宮の社司の枕元に立った水神が、この地に水神を祀るよう告げたのだといいます。以降、近隣はもちろん、江戸市中の水利を守る神として、参詣者が絶えなかったといいます。

 翌日の大晦日には東京は再び大雪に見舞われましたが、その雪の間の1日、鮮やかな青空と樹冠に残った黄色の葉、そして柔らかな日差しが心地よく、久しぶりに幸せな気分を感じさせてくれたイチョウとの出逢いでした。

 

水神社のイチョウ

場所 文京区目白台1丁目9番地の1 水神社
交通 都電荒川線 早稲田駅 徒歩5分 または
東京メトロ有楽町線 江戸川橋駅/
東京メトロ東西線 早稲田駅 徒歩15分
樹のデータ 幹周4.1m
保護制度 (指定なし)

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