調布駅方面から市役所前の通りを南へ進むと、都立調布南高校の南側で桜堤通りと交差します。その交差点の中、コンクリートで囲われた小高い盛り土の上にこのエノキは立っています。
1979年の「調布の名木」には、このエノキの傍らに観音立像をまつった祠があると記されていますが、現在はどういうわけか見当たりません。あるいは移転されたのでしょうか。
明治40年までは、地蔵尊もあったそうですが、こちらは多摩川の大洪水で流出したといいます。少なくとも1920年当時、地蔵尊が流されるような洪水に遭っても、このエノキは流されないだけの大きさ・根張りを持っていたということになりますので、100年は越していることが想像できます。
どういう経緯で観音像の祠がなくなり、道路の中央に孤立するようになったのかは分かりません。この樹に出会ったのも冬のことなので、見た目には健康状態は分かりかねるのですが、見てのとおり注連縄も巻かれ、今でも信仰の対象となっっていることが分かります。桜堤通りは最近、鶴川街道と接続され、さらに西側へ延伸されようとしているので、交通量の増加が非常に心配されますし、駅に近いことから高層建築に囲まれてしまっています。あまり環境としてはいいとは言えませんが、これからも長生きしてほしいものです。