善光寺坂のムクノキ

  ビルの谷間に東京ドームが見える小石川界隈。「こんにゃくえんま」のあるえんま通りを西に折れ、坂道を登っていくと、目的のムクノキが見えてきます。幹にはかなりの痛みがみられ、高さもありませんが、葉は豊富に茂っており、樹勢は悪くなさそうです。

 坂の下の方には、坂の名前の由来になっている善光寺が、上の方には伝通院というお寺があります。もともとはすべて伝通院の寺域だったようで、ムクノキもこのお寺と深いつながりがあります。江戸時代、伝通院の学寮で修行した澤蔵司(たくぞうす)という優秀な僧がいました。その僧が修行を終えた夜、学寮長の枕元に立ち、「私は千代田の城内にある稲荷である。修行を受けた恩返しに今後もこの寺を守る」と告げたため、寺内に稲荷を祀り、御神木としてムクノキを植えたとされています。

 時代が経って、いつのまにかムクノキの根元は稲荷の境内から切り離され、道路の真ん中になってしまいました。こうなると、邪魔だから切ってしまおう、という声が出るのはよくあることです。ところが、何度も伐採が行われようとしたのですが、工事関係者に不慮の事故が続きました。それで「これは澤蔵司の祟りだ」といわれ、伐採はとりやめになったという話が残っています。

 その後、ガードレールに囲まれ、両側を車が通行する状態が続いていました。が、現在は片側の車道が歩道と植え込みになり、樹が守られています。文京区もこのムクノキを地域のシンボルツリーとして見ているようで、嬉しいことです。

善光寺坂のムクノキ

場所 文京区小石川3丁目8番地 文京区ポケットパーク
交通 都営三田線 白山駅 徒歩7分、
または営団南北線・丸の内線 後楽園駅 徒歩10分
樹のデータ 幹周4.7m 樹高約8m 推定樹齢300年
保護制度 指定なし

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