御岳山の南側にある沢には、通称ロックガーデンと呼ばれるエリアがあります。沢がつくる景観が美しく、人気のあるスポットになっています。
そのロックガーデンの最上流には綾広の滝という滝があり、そのすぐ手前に立派なカツラの樹がいます。一本の太い主幹に、成長しつつある何本かの細いひこばえが寄り添っています。近くに滝があるために空気が湿り気を帯びていて、主幹は苔むしてふかふかとした緑が、かなり上の方まで広がっています。
カツラの巨樹・大木というと、かなりの場合は主幹とひこばえの区別がつかないほど、たくさんの幹が集まってできた集合体のようになっています。巨樹ファンにはこうした株立ちが多いカツラが好きな人が多いようですが、特に樹が好きなわけではない人には、あまり評判はよくないようです。
このカツラの場合、しっかりとした主幹がすらりと伸びているので、株立ちのカツラがあまり好かない人が見ても、きっといい樹だと思うことでしょう。特にこのカツラの美しいところは、すらりと真っ直ぐに伸びた主幹と、そこから放射状に広がる枝のバランスがとてもよいところです。
このカツラの名前は、中里介山の「大菩薩峠」という長編小説のヒロインにあやかっているそうですが、よくは分かりません。同じく御岳山の山中には「龍之助松」と名づけられたマツもいて、こちらは主人公の机龍之助と同じ名前なので、こちらもあやかっているのでしょう。いずれにしても、このネーミングに関しては文献等が入手できないので、小説を読まないとよく分からないようです。
御岳山には名木として数えられている樹が、お浜のカツラを含めて11件あります。名木のリストを別のページに掲載していますので、訪れる際にチェックしてみてください。