この「東京の樹」で紹介する中では、私の自宅からもっとも近い樹です。古くからある墓地の中央にでんと構え、秋にはたくさんの赤い実をつけます。地元では隠れた名木としてファンの多い樹です。
幹そのものはさほど太いものではなく、樹形も耳がつきだしたような形で、美しいとまでは言えません。しかし、上述したように、秋に実る、房についた赤い実はまるでシャンデリアのように垂れ下がり、とても目立ちます。
なぜかこの実は冬になってもたくさん残っています。あたりには野鳥も多く、食べられないのはとても不思議です。一説では、この実は野鳥にとってもあまり美味しいものではないらしく、ほかの食料がなくなってから手をつけるのではないか、といわれます。
このあたりは多摩川の北岸最大の支流、野川の上流にあたり、地下水が豊富な地域です。野川をはさんで北側の国分寺崖線には多くの湧水源があります。そのような地下水環境が、毎年この樹に多くの実を実らすのでしょう。