都民の森のトチノキ

 東京を代表する山のひとつ、三頭山の周辺は秋川の水源地帯で、江戸時代から水源林として伐採を禁じられてきたといいます。そのため、豊かなブナやミズナラといった、東京では珍しい種類の林が今も残っています。

 東京都がその三頭山周辺を整備して、都民の森林レクリエーション施設の建設に着手したのは、1985年。当時の地方新聞「アサヒタウンズ」は、観察施設の材木防腐剤に使われるタールの流出や、発破で崩された岩が沢を埋める様子など、環境破壊のすさまじさに触れ、古くから三頭山を知っている登山者が悲しむ様子を伝えています。

 そうして完成した都民の森が、健脚ではない人たちにも訪れやすい森になったことは確かで、私もマイカーを降りてほんの数分で、この大きなトチノキと対面することができたのですから、批判ばかりもできないものです。

 このトチノキは、奥多摩周遊道路沿いにある駐車場・バス停から、都民の森の中心施設・森林館へ至る数百メートルの途中にいて、訪問者を出迎えてくれます。都民の森では遊歩道以外に立ち入ることはできませんが、遊歩道はトチノキの幹に触れるくらい間近に通っていて、真下から見上げることもできます。その迫力はなかなかのもの。

 季節は秋。周囲の樹もトチノキ自身もだいぶ葉を落としてきていて、根元も明るくなっていました。近くには同じクラスのトチノキが2本いますが、森林館周辺を離れると大きなトチノキはいなくなるので、このあたりの環境がトチノキに合っていることが分かります。

 ほかの写真で見るトチノキは、幹に着生したコケが瑞々しく、湿潤な空気感をもってそこにいます。トチノキは葉も大きく、水の豊かな場所を好んでいるようです。

 ところが一番近い沢はなんとコンクリート三面張り。それだけ見るとここはどこ?といった感じです。もちろん水は斜面の上からも地下水になって流れていることでしょう。短期的には心配はいらないかも知れませんが、長期的にトチノキと周辺の木々に与える影響は心配されます。

 トチノミ(トチノキがつける実)は現代は主にトチ餅などに使われていますが、山村では飢饉の際、トチノミが貴重な食料となるため、大事にされてきました。そのため奥多摩にはトチノキの巨樹が多く、檜原村ではこのトチノキが最っとも大きいのですが、奥多摩町内には5mクラスのトチノキも数本います。

 都民の森には、大きな樹には「森の太い樹」とかかれた案内板が設置されていて、幹周と樹高、都民の森のなかで何番目に太いかが記されています。森林館の事務所を尋ねれば、「森の太い樹マップ」も貰うことができます。が、この太い樹の案内板、どうも道沿いの樹だけを計っているようで、道から外れた、あきらかに大きな樹についてはなんとも書いてありません。森の奥に目を凝らし、「あの樹も大きいなあ」などと探してみてはいかがでしょうか。ただし、森の保護のためにも、道を外れないでくださいね。

 

 

 

 

都民の森のトチノキ

場所 檜原村7147番地 檜原都民の森
交通 JR五日市線 武蔵五日市駅からバス「都民の森」下車歩3分
樹のデータ 幹周4.52m 樹高約18m
保護制度 指定なし

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