八王子市の古い文化財資料を見ると、幹周12mの巨杉が、元八王子にある、ということが載っていました。そんな巨大な杉があるとしたら、大変なことです。関東最大の中川の箒杉に匹敵し、都内では全樹種でも最大の樹になります。
残念ながら、この資料は1970年頃のもの。この頃急速に弱り、枯死してしまったとのこと。30年も前となると、もはやその痕跡さえ残っていない、と思っていました。
が、巨樹画家として有名な平岡忠夫氏の著書を読んでいると、最近の地図の表記を頼りに行ってみたが、切り株が残るのみ、地図業者はけしからん、といったことが書いてあります。えっ?切り株残ってるのか?それはそれで面白そうだ、と思い、出かけてみました。
場所は大正・昭和両天皇の天皇陵がある武蔵陵墓地の北側。中央自動車道が通る広い谷戸は、その西側に八王子城址があり、それで元八王子と呼ばれるのでしょうか。この地域の鎮守・八幡神社の参道脇に、その切り株がありました。切り株とはいえ、この大きさは只者ではありません。というと、屋久島のウィルソン株と比較したらどうだ、と言われそうですが、確かにあの島のスギと比べれば小さいかもしれません。しかし、この大きさのものが、東京近郊に存在するということ、それは凄いことではないでしょうか?空洞の内部は見ることができませんが、大人がひとり、足を伸ばして寝られるのではないかと思います。
最初の写真で見た風景は、スギの周囲には何もなく開けていましたが、今は参道の周囲は住宅で囲まれ、最初は本当にあるのだろうか、と心配になったくらいです。今後、いつまで朽ちずに、また撤去されずに残るか分かりませんが、滅多に見れないものを見た、という気がします。
なお、生存時の資料によれば、樹齢700年、幹周12m、樹高30m、枝は高さ10mから広がり、「逆さ杉」の愛称があったと書かれています。