薫蓋樟

 大阪は門真の、いかにも古そうな住宅地。狭くくねくねと曲がる街路の家並みの向こうに、突如大きな樹冠が現れます。その大きな樹冠は、小さな三島神社の社の上をすっぽりと覆って、豊かな葉を茂らせています。衣服の防虫剤として知られる樟脳のかおりと、社に蓋をしたようなその様子から、薫蓋樟と名づけられたとも言われています。大阪府では全樹種でもっとも大きな樹です。

 幹の太さもさることながら、その力強い枝振りには圧倒されます。四方八方に伸びた大枝は、所々、クランク状に折れ曲がっています。真っ直ぐ伸びた枝が切られたか落ちたかした後、そこから分かれた枝が大きく成長していったものでしょうか。あまりにも多くの枝がくねくねと曲がっているので、樹自身がそういう意図を持って伸びているのではないかとさえ思えてしまいます。

 門をくぐって根元に寄ります。手前に突き出したこぶは枝を落とした痕だといいますが、何ともいえない不思議な出っ張りです。樹皮もクスというより、マツのそれを思い出させます。高さ3mほどから放射状に何本もの大枝が出ている姿はなんとも不思議で、どうしたらこのような姿になるのかと考えてしまいます。枝の曲がり具合といい、想像に事欠かない巨樹で、楽しくなります。

 近くには古川という川が流れる三島神社周辺は、やはり古くからの集落だといいます。推定樹齢1000年。いつからか、土地の人たちは、水辺に近いこの大樹の下に集まり、身をゆだねてきたのでしょう。日本人は、自然物に神の存在を信じる存在です。そのことを、この樹の下で想わずにはいられません。

 

 徒歩わずか5分ほどの古川沿いに、もう1本、稗島のクスという美しい樹冠のクスがいます。こちらも同時に訪れることをお薦めします。

 

薫蓋樟(くんがいしょう/くんがいくす)

場所 大阪府門真市三ツ島1374番地 三島神社
交通 京阪電鉄線 門真市駅からバス「三島」下車歩1分
地下鉄長堀鶴見緑地線 門真南駅 徒歩15分
樹のデータ 幹周12.5m 樹高約25m 推定樹齢1000年
保護制度 国指定天然記念物

Mapionで場所を確認する。


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