月夜根沢の大トチ(2)

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 1本目のトチの巨樹から登山道を登ること5〜10分。道は鬱蒼とした人工林の中に入っていきます。その人工林の左斜面、梢の下から覗き込むと、大きな影が見えます。下からではその全貌はまったく分かりませんが、この人工林はかなり急傾斜で大きな浮き石も多く、登るのはかなり危険です。登る際には登山道を少し進んでから、斜面を横に伝って行くのがいいでしょう。この際、落石を登山道に落とすと下を歩く人に危険が及ぶので、落石を落とした際には大きな声で「落石!」と叫ぶのをお忘れなく。

 斜面を登っていくと、次第にその姿が明らかになっていきます。先ほどのトチの整った、女性的なフォルムとは対照的に、なんとも荒々しい男性的な姿をしています。全体として幹や枝が右巻きにねじれるように伸びています。そして谷側の斜面には長く太い根ががっしりと地面を掴んでいます。それほど急な傾斜です。そこに立つ人間は、気を抜くと下まで転がり落ちてしまうでしょう。恐らくは地下に、もっと太くたくさんの根が伸び、巨体を支えていると思われます。

 裏側になんとかトチの巨樹に取り付き、裏(山)側を覗き込むと、そこはまったくのがらんどう。この巨大なトチは、表皮を残して内部はほとんど朽ちていました。巨樹になると、エネルギーの消費を抑えるために内部が空洞になることがよくあります。このトチも、内部を空洞にし、残った表皮を伝って栄養や水分を根から葉へと送っているのです。下から見る奔放さに対して、裏側の姿はまったく想像がつかず、驚かされました。

 上で、このトチを男性的と表現しました。面白いことですが、女性が長生きして男性のほうが比較的短命というのは、どうも人間界だけではないようで、巨樹の世界でも雄木・雌木と名づけられている1対の樹では、たいてい雄木のほうが先に朽ちています。このトチを見ると、奔放で男性的に見える樹のほうが、整った女性的な樹よりも実際には長く生きているか、環境が厳しいために荒々しくなったのかも知れないと思いました。

 この大トチの周辺には、大きさの揃った石が多数あり、また沢の対岸には炭焼き釜の跡と思われる石組みがあります。時代は分かりませんが、この大トチの周辺で人が活動した痕跡で、ひょっとすると2本の大トチは山の神として祀られてたこともあるのかも知れません。

※ここでは沢の名称を「月夜根沢」としました。現地の案内図や昭文社の登山地図で使用されており、一般的な名称と判断しましたが、国土地理院発行の地形図では「月屋根沢」となっています。

 

月夜根沢の大トチ(2)

場所 山梨県大月市梁川町立野 月夜根沢(月屋根沢)
交通 JR中央本線 梁川駅 徒歩1時間〜1時間30分
樹のデータ 測定不能
保護制度 指定なし

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