宇津貫熊野神社のラッパイチョウ

 イチョウというのは面白い樹で、ごくたまに不思議な葉をつけた樹が見つかります。「オハツキイチョウ」というと、葉に銀杏がつくもので、全国で50件くらいの報告があるそうです。ここで紹介するラッパイチョウというのは、扇形に開くはずの葉が、何故か漏斗状になっているもので、こちらは最初に兵庫県篠山市の医王寺で発見されて以来、現在までの報告例は15件程度にとどまっているようです。

 その珍しいラッパイチョウが、八王子市で見つかったという報告を受け、会いに行きました。

 発見者は日本の巨樹・巨木の高橋さん。偶然立ち寄った神社で落ち葉を見つけたそうです。パラパラと小雨が降る2003年8月下旬、高橋さん、樹木医のHさんと共に出かけました。

 樹そのものは、それほど大きなイチョウではなく、ともすると誰も関心を寄せないかもしれません。傍らには皇太子殿下御成婚記念と彫られた石碑があり、だとすると植えられた時に何歳のイチョウだったのか分かりませんが、古くて50年といったところでしょうか。

 地面を見ると、ありました。見事な形の、落ちたばかりと思われるラッパ状の葉。2002年春には前述の医王寺を訪れたことがあるのですが、その時は芽吹き前で、前年の落ち葉から、もはや水分を失って小さくなったラッパを見つけたくらいでしたので、今回が私にとってはじめてのラッパイチョウとの出会いでした。こんな奇妙な葉があるものなのかと、感激してしまいました。

 実はラッパイチョウといっても、全ての葉がラッパ状になるわけではなく、むしろ、下の写真のように、ラッパになるのはごく少数の葉にすぎません。そのため、この宇津貫熊野神社のように、あまり特徴の無い若い樹では気がつかれない場合も多いのではないかと思います。今回発見された高橋さんが、普段から樹をよく見ている人で、且つ神社に関心が深いからこそ、発見できたのではないかと思います。

 この宇津貫熊野神社の近くにはJR横浜線が走っており、その対面には丘の上に取り残されたようなこんもりとした森があります。この森には八王子市指定天然記念物の立派なスダジイがいます。ぜひこちらも訪れてみてください。

 

宇津貫熊野神社のラッパイチョウ

場所 八王子市宇津貫町
交通 JR横浜線 八王子みなみ野駅 徒歩15分
樹のデータ 幹周約2.1m 樹高約20m 推定樹齢50年
保護制度 (八王子市が保護を検討中)

Mapionで場所を確認する。


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