本郷弓町のクス

 Natraという雑誌の2001年5月号は「巨木に出会う」という特集でした。東京近郊の巨木がいくつも紹介される中で、このクスノキが私の目を惹きました。薄暗い空の下、ライトアップされた、竹囲いの中のクスの巨樹。

 東京でクスの巨樹といえば、大雄寺のクスノキがトップだとされていますが、写真でみたこの樹の迫力は、大雄寺のそれとは違ったものを感じ、どうしてもこの樹に逢いたくなりました。

 御茶ノ水からオフィス街を抜けていくと、本当にこんなところに巨樹があるのだろうか、と疑いたくなります。それほど緑を感じない街の中に、楠亭の大クスが悠然と待ち構えていました。

 これは凄い。公式には幹周4.7mとなっていますが、果たして本当だろうか。Natra誌は6mとしているのですが、そちらの方が正しいように感じます。残念ながら敷地西側にマンションが建ち、枝の広がりが抑えられてしまっていますが、太さに関しては大雄寺のクスノキよりもこちらのほうがかなり太いように思えます。とても健康そうなクスです。交通量の少ない裏通りだということも、この樹にとって幸運なことでしょう。

 これだけ大きなクスともなると、推定樹齢は400年とも600年とも言われますが、どちらにしろ、江戸時代初期には既にここに居たことになります。その江戸時代、ここには楠木正成・正行の子孫とされる旗本の屋敷があったそうです。旗本屋敷は大正時代に解体され、分譲されてしまったそうですが、その一角に楠亭というフランス料理店ができ、建物こそ現在はマンションに変わったものの、このクスノキとともに現在に至るのだそうです。

 ところで、これだけ大きなクスノキなのに、区の天然記念物にさえ指定されていないのは何とも不思議です。そういえば、大雄寺のクスノキも天然記念物に指定されていません。条例がないからでしょうが、せっかくの街の財産、手厚い保護施策を講じてほしいものです。

 

 

本郷弓町のクス(楠亭の大クス)

場所 文京区本郷1丁目28番地の32
交通 営団丸の内線・都営大江戸線 本郷三丁目駅 徒歩5分
都営三田線 春日駅 徒歩6分
樹のデータ 幹周6m(1988年環境庁調査では幹周4.7m)
保護制度 文京区保存樹木

Mapionで場所を確認する。


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