二子玉川からほど近い五島美術館。東急グループ創始者の五島氏の旧宅で、氏が収集した美術品を展示しています。庭園のほうも広大で、湧き水が湧き、大木も多く、石仏がたくさん置かれています。
その庭園の一角、国分寺崖線の中腹には、東京最大といわれるコブシの樹がいます。もっとも、個人のお宅でこれより大きいコブシの樹を知っていますので、最大ではないのですが、それでも有数の大きさであることは間違いありません。
美術館の入館料は700円ですが、庭園だけなら100円で入ることができます。入園券に印刷された満開のコブシの写真に心躍らせてコブシの樹に向かいましたが、ちょっと早かったか、あるいは花芽が少なかったのか、写真ほどには咲き誇ってはいませんでした。しかし、樹冠の広がりがあるので、根元から見上げた姿はすばらしいものでした。5株からなる幹が放射状に広がり、それぞれがいっぱいに大きな花をつけた様子は壮観です。
実は、私がこの樹に対し、少し残念に思っている理由は、ある本で見た写真にあります。その本に掲載された「上野毛のコブシ」は、1本の幹から大きく広がった美しい箒方樹形をしていたのです。ところが、実物はそうではなかったので、半ばがっかりして帰宅、そして再びその本を見て気づいたのですが、その写真は新宿御苑のハクモクレンを写したものだったのです。上野毛のコブシにとってはとんだ災難ですが、よくよく考えてみれば、東京都区内にこれだけのコブシの大木が残っていること自体、貴重なことではないかと思います。