旧東海道沿いにある古刹・品川寺は、青物横丁駅から行くと、まるで正反対に入り口があるのでひたすら歩かされる印象がありますが、この樹に逢うことができれば、そんな些細な面倒も吹っ飛ぶでしょう。
同じ品川区の光福寺のイチョウと比べてしまえば、確かに幹周も気根の数も劣ります。しかし樹の価値は数字ではありません。数は少なくとも、長く垂れた気根は美しいバランスをもっています。
旧東海道を600年間眺めつづけてきた巨樹。周囲は商店街が連なるなど、にぎやかな地域になっていますが、巨樹のまわりだけは静かな空間が、まるで時を止めたように残っています。
イチョウの前にあるのは庚申塔で、大きな方は1680年のものだそうです。境内の鐘楼の鐘は1867年のパリ万博に出品された後行方不明になり、昭和になってスイスの博物館で発見され1925年に帰国したもので、「洋行帰りの鐘」と呼ばれています。
品川寺の門前正面には、小さなマツがいます。旧東海道の街道松をイメージして、各地の東海道の宿場町から贈られたマツのひとつです。東海道沿いにはほかにもイチョウの大木が多くいるので、街道松といっしょに巡ってみてください。